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恋愛小説? 早瀬走の書いた小説『秘密』【イベント】

この記事では、にじさんじ所属のVtuberである早瀬走が配信内で執筆したBL小説の全文を掲載しています。

目次

小説『秘密』の概要

天宮こころからのお願いで、マインクラフト内の図書館に寄贈する本を書くことになった早瀬走
一見恋愛小説のようなその本を読んだ西園チグサは怖いという感想を呟いた。

実際にネット上にありそうなほど上手い早瀬走の恋愛小説の内容をぜひ閲覧ください!

著者である早瀬走による執筆と音読を聞きたい方は下記のリンクから視聴できます。
https://youtu.be/IdNL8qZQM0k

小説『秘密』の内容

小説の内容は配信内で早瀬走が執筆した本の内容を引用したものです。
当サイトの管理人によるオリジナルではありません。

秘密

僕の名前は佐倉真琴。
しがないサラリーマンです。朝日が昇るとともに起きて、安物のスーツを身にまとい、密度の高い満員電車に50分揺られ、やっとの思いで会社にたどり着きます。上司には仕事を押し付けられ部下には舐められさんざん扱き使われているのです。精神も肉体もボロボロになりながらギリギリ日が跨がないほどの時間に満員電車に乗り込み、家に着く頃にはてっぺんをとうに過ぎている。そんな日々を毎日過ごしております。
僕は所謂社畜という生物なのです。
そんな社畜の僕ですが、1つだけ秘密があります。
実は僕、好きな人ができたんです。

小森直人くん。
僕の降りる一つ前の駅にあるにじさんじ学園に通っている高校2年生の男の子です。満員電車の同じ時間同じ車両に彼はいつも乗ってきます。
僕の冴えない代り映えのない人生に花を添えてくれるそんな存在なのです。
好きになったきっかけ?
そんなのありません。気が付いたら車内で彼を目で追っていて、気が付いたら彼の事をいつも考えていて、気が付いたら彼の学校、バイト先、住所まで調べ上げていたんですから。
僕は直人くんにひとめぼれしてしまいました。
直人くん、君の名前が直す人であるように僕の病気も直してはくれませんか?

さて、恋というのは人を変えるといいますが、僕も恋をして変わったものだと思います。
まず思い切りというものが付きました。
今まで僕は何があっても会社を休むだなんて思考に至ったことは一度だってありませんでした。
というのに、直人君を一目見たあの日、気づいたらその日のうちに有給というものを申請しておりました。
有給の申請書だなんてどう書いたか全く覚えておりません。なんていったって有給なんて言葉は聞いた事くらいはありましたがどこか夢物語でこの会社と僕には関係のない異世界のような言葉にしか感じえなかったのですから。
その申請書を出した時の上司の顔と言ったら、今思い出しても笑ってしまうほどです。

渋々といった顔でその紙が上司によって受理された日、僕は休みだというのにいつもと変わらない時間に起き、いつもの着つぶしたスーツを纏っていつもの時間に電車に乗りました。
違ったのは普段降りる駅の一つ手前で降りたこと、そしていつも僕やほかの社員たちが仕事に勤しんでいる時間、僕はひたすら彼が学校の門から出てくるのを待ち続けたことです。
その時の僕は訳の分からない高揚感みたいなものを感じておりました。
浮足立つ思いを抑えつつ、ただひたすら彼があの門から出てくるのを待ち続けていたのです。
その日から僕は彼のすべてが知りたくなりました。
住所さえ分かれば、他は簡単でした。
名前も家族構成もすべてが芋づる式に判明していきました。
彼は母子家庭で、直人君を学校にやるために深夜まで働き詰めの母親と2人暮らしのようでした。母親が深夜まで帰ってこないひとりぼっちの君が心配で、心配で休みの日はいつも彼を見守ってしまいます。
1人でも寂しくないように。

いけない、これ以上はいけないと頭ではわかっていても僕はこの行為をやめれませんでした。

2週間ぶりの休日、僕はいつものように直人君の家に向かいました。
その日は朝から直人君の家に訪れたのですがすでに直人君はおりませんでした。
出かけてしまったのでしょう。直人君が帰って来るのを待つ間は苦痛などなにも感じずとても楽しい時間なのです。

ですがその日は変な胸騒ぎのようなものを感じておりました。

頭を鈍器で殴られたような感覚というのでしょうか。
視界が歪み立っているのもままならないほどでした。
彼が同じくらいの年の可愛い女の子と並んで帰ってきたのです。
その衝撃ときたら、朝に食べたサンドイッチをすべて戻してしまいそうになるほどでした。
必死に手で口元を抑えていますが、代わりに次から次へと僕の目から涙が伝い溢れ出ます。

それはそうだ。
彼みたいな綺麗で可愛らしい少年に、恋人の1人もいないはずがないじゃないか。
解ってはいるんです。
頭ではわかっているんです。
ストーカーなんて行為がダメなことも、直人君なら可愛らしい彼女くらいいるだろうということも、
そして、僕がもうすでに手の付けられないほどに狂ってしまっているということに・・・

ぷつん、と何かが切れたような音が聞こえました。

仕方ないなぁ直人君。

君ってやつは悪い子だ
こんなに僕を不安にさせて・・・
今、迎えに行くからね。

僕の名前は佐倉真琴。
しがないサラリーマンです。僕には2つの秘密があります。

朝日が昇るとともに起きて、安物のスーツを身にまとう。そこまでは今までと一緒。

「直人君、行ってくるよ」

裸でベットに横たわり死んだように眠る直人君にそっと口付けます。
首には僕が初めてプレゼントしたモノ。
つながれた鎖を指で弄んでは、名残惜しい思いで家を後にします。
今日も僕は彼の待つ家に帰るため、平凡で代り映えのないクソみたいに退屈な1日を消費するのです。

END

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