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名作! 来栖夏芽の書いた小説2『バナナの皮で滑ったら異世界に来た件』【イベント】

この記事では、にじさんじ所属のVtuberである来栖夏芽が配信内で執筆した名作の全文を掲載しています。

目次

小説『バナナの皮で滑ったら異世界に来た件』の概要

天宮こころからのお願いで、マインクラフト内の図書館に寄贈する本を書くことになった来栖夏芽。
その内容に視聴者のみならず他のライバーからも高い評価を受けます。

後に作家デビューも果たした来栖夏芽の名作小説の内容をぜひ閲覧ください!

著者である来栖夏芽による音読を聞きたい方は下記のリンクから視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=xQk3IPvFloY

小説『バナナの皮で滑ったら異世界に来た件』の内容

小説の内容は配信内で来栖夏芽が執筆した本の内容を引用したものです。
当サイトの管理人によるオリジナルではありません。

バナナの皮で滑ったら異世界に来た件

どうやら俺は、異世界に来てしまったらしい。

今朝のことを思い出してみる。
確か普段なら家を出る時間に起きてしまって、慌てて準備をし、家を飛び出したら、何故か交差点の点字ブロックの上にバナナが置いてあって、俺は保護色を呪いながら思い切りズッコケたのだ。
なんとも間抜けである。

だが、俺でよかった。
点字ブロックを必要としている人がこんな目にあってしまうより、俺のような若く頑丈な青年がズッコケたほうがずっといい。
あ、でも、バナナの皮を置いた奴はもっとすごいズッコケ方をしろ。お前は許さん。小指もぶつけろ。
そんなこんなで、打ちどころが悪かったのか、どうやら俺はその衝撃で異世界に来てしまったらしい。

周りを見渡してみる。
誰もいない白の空間が広がる。俺は地面から少し高い祭壇のようなところに寝かされていた。祭壇を降り、観察してみる。

俺の周りには厚い白い布。
祭壇は柔らかであったが、その下の地面は固く、出入り口は見当たらない。

だが、窓が一つあった。
窓から外の景色を眺めてみる。窓の外は崖だった。
ここから出られないのだろうか。なぜこんなところに閉じ込められているのだろう。こんなことなら朝飯もちゃんと食ってくるんだった......。
こんな時でも腹は減る。
元の世界へは帰れないのだろうか......。
俺が少し不安を覚えたところで、ガーッという音とともに女が現れた。

「あら、もう起きたんですね。ご気分はいかがですか?」
一面白の世界に、突然、白を覆った女が現れた。
「おなかへった......」
俺は素直な気持ちを述べた。
ここに来てから、どのくらい時間がたったのかわからないが、最後に食べたカップ麺が非常に恋しい思いだった。

それから、たびたび女は現れた。
どのように出入りをしているかはわからないが、ガーッという音とともにやってくる。
俺は女が持ってきた飯を食べた。
初めはなんだかよくわからないものが多く、食べるのに躊躇してしまったが、慣れてしまえればなんてことない。特に白いふわふわしたものが俺のお気に入りだ。

そんな日が数日続いた。

白を纏った女は甲斐甲斐しく俺の世話をする。この女は異世界から来た俺の世話係なのかもしれない。

外はどうなっているのだろう。俺はまだこの部屋から出る方法を知らない。
俺は白の女に問いかける。

「なあ、この部屋の外はどうなっているんだ」

祭壇の布を整えるのに夢中になっていた女がこちらを見た。
「外の世界?」
女は不思議そうに聞き返す
「変わりないと思いますよ」
女の返事はいまいち要領を得ない。
「そうじゃない。俺がいた世界とこの世界はどう違うのか教えてくれないか」
「どういうことですか?」
女は何も知らずに俺の世話をしているのだろうか。
そういう命令なのか......?
女は続ける。
「元いた世界とはどういうことですか?」
女はきっと知らないのだ。
俺がここではない世界から来た、普通の人間であることを。
じゃあ誰が祭壇に閉じ込めているんだ。
女は先ほどからの俺の発言に困惑した顔をしている。

すべて打ち明けるか?
だが、打ち明けたとして、この女に何かしらのペナルティが科せられやしないだろうか。
名前を知らない女だが、ずっと世話をしてくれた女だ
それなりに恩は感じている
「具合悪いんですか?」
女は心配そうに俺の顔を覗き込む。
「何か思うことがあれば、遠慮なく仰って下さいね」
女は優しい声で言った。
心臓が高鳴る。
そうだ、女はいつも俺に寄り添ってくれた。
むしろ、俺の出自を打ち明けねば、不義理というものではないのか。

俺は決心した。

「実は......俺はこの世界の人間じゃない。異世界からここに飛ばされてきたんだ」
女の息を飲む音がした。
「......そう、ですか。それは......お辛かったでしょうね。お話して下さりありがとうございます」
動揺しているのか、女の声が少し震えている。無理もない。突然こんなことを言われたら誰だって驚くだろう。

ガーッという音とともに、部屋から女が消えた。

俺はまた
白の空間に一人になった。

【とある世界の噂話】

先生、あの2434号室の患者さんの話聞きました?
あの人大丈夫なんですかねぇ。なんでも自分のことを『異世界からの転生者』だとかなんとか言ってるみたいなんですよ!怖いわぁ!
え?あぁ、そうそう、あのバナナで転んで意識を失って搬送された患者さん!
ベッドのことも祭壇って呼んだり......生活のことも忘れてて......あ、一種の記憶喪失なんですかねぇ......

俺はまた、白い空間で
ひとりつぶやく。

「ああ、お腹減ったなぁ」

fin.

あとがき

2434文庫
バナナの皮で滑ったら異世界に来た件

令和2年 11月 20日 発行

著者 Rice.K
発行者 来栖夏芽
発行所 Maincraftにじ鯖

落丁・乱丁本はご面倒ですが来栖までご連絡ください

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コメント

コメント一覧 (1件)

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